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編集長日記

「みらい」の◯を清水港で見送ってきた|2025.12.30 編集長日記

ねぇ早すぎるってば時間の流れ。「みらい」が最後の航海を終えて、まるひと月。年末からマリアナに行くと話していた筆頭研究者と次席研究者のおふたりは、マリアナ海溝でお正月を迎える「かいめい」に、サイパンの港からもう乗船した頃だろう。一方のわたしは、帰ってきて以来クライアントワークに日々忙しくしている。航海取材中は「ほぼ連絡つきません」で容赦してもらっていた分を取り返さなければいけないので致し方ない。

かといって、勝手に続きものにしておいて完結しないのも気持ちが悪いので、「みらい」ストーキング旅の記録を今さらながらお届けします。


6時半に合流したフカメディア特別編成「みらい」空撮チーム(全2名)は、ドローンの離発着拠点を無事に定め、7時前には撮影を開始していた。

空は晴れ間がのぞいているものの、風が強くてドローンを飛ばすにはギリギリの天候。5時台の岬で浴びた風よりマシとはいえ、じわじわと体温を奪っていく冷たい海風が吹きつける中、「みらい」と陸を繋ぐタラップの揚収が8時半前からはじめる。

ついこのあいだは、この作業を船の中から見ていて、今度は陸から見守る側。あっち側とこっち側の超えられなさが少し切なく、もどかしい。

どんな瞬間も軽々飛び回っておさえられるドローン、すごい

ドローン撮影があることは、JAMSTECから船側にも事前に通達されている。目の前を飛ぶドローンに気づいた船員さんたち、「あっ!ほんとに撮ってる」と思ったかどうかは分からないが、ほんのりと背筋が伸び、少しはにかんだように見えた。

係船ロープの巻き上げがはじまると、みるみる岸壁から離れていく大きな船体。この時点で、船首は進行方向とは逆を向いている。どうやってUターンするんだろうか。車のUターンを想像すると、あんな大きな船体がどうやって向きを変えるのか、イメージが描けなかった。

岸壁から水平に遠ざかっていく「みらい」。向こう側の岩壁に近づいてから前進して、旋回してくる…..?相変わらず、無防備な顔に冷たい風が刺さるように吹き付けるのも構わず、じっと見守る。気づけば、船首がさっきまで横付けしていた岩壁に正面からコンニチワしていた。

渦を巻くような船尾右側と船首左側の波紋が見えますね?

これが、スラスターの力……!

スラスターとは、船を横移動させたり回転させたりするためのプロペラがついた装置。岸壁から離れていくときもスラスターで動かしていたわけで、それにしてもこんなにおだやかに美しく、コンパスみたいにくるりと回るのは、見ていてスカッとする。

スラスターは「しんかい6500」にもついていて、船と違って陸上で見える機会が多いので分かりやすい。

出典:https://www.jamstec.go.jp/j/about/equipment/ships/shinkai6500.html

全長が200メートル以上あることを感じさせないほど、エレガントに進行方向へと向き直した「みらい」は、最後の航海に出発した時と同じように、静かに清水港から出かけていったのだった。

次に見るときは、もうサッカーボールはないのだな。心がしんみりする。

最後の最後に富士山がちょっと顔を出した。

2時間半限り、最初で最後の空撮作戦は終始、風との戦いだっとという。その環境ですごい数のショットを収めてくれたオペレーターさんは、やっぱりプロ中のプロだった。

午前9時18分。平べったい特徴的なおしりを見送ったら、あとやることといえば…。

ちょっと食べてから撮った。だってお腹空いてたから。

撮影現場が美味しいものの宝庫なのは、この上なく嬉しい。夜明け前からずっと動いていて、とにかくお腹が空いている。これくらいの贅沢は許されるはずである。

青森もおいしかったけど、清水もおいしい。

沁みる。「ちきゅう」だとは誰も信じてくれなさそうなヘタクソ写真を震えながら撮ったことも、サッカーボールを掲げた最後の姿を上手く収められたことも、日付が変わってからの今日1日のぜんぶをひっくるめて、とにかく沁みる。

オペレーターさんとはここでお別れ。「みらい」を追って単身、横浜方面へと向かったのだった。

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脈 脈子

脈 脈子

編集長

大阪生まれ、兵庫暮らし。 15年前から脈 脈子と名乗っているが、ミャクミャク様に持っていかれた感のある残念なひと。イカ贔屓。

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