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水族館メシ

ミルクに抱かれた魚の旨み。城崎マリンワールドの「ブリジェラート」

水族館でしか出合えない食べものがある。

生き物をモチーフにしたもの
地元の食材を活用したもの
イベントごとのスペシャルメニュー…

スタッフたちのアイデアと情熱の結晶
それが、水族館メシ。

ブリがトッピングされたジェラートを見たことがあるだろうか?生乳をたっぷり使った白く輝くミルクジェラートに、成長とともに呼び名がつぎつぎと変わる出世魚の最終形態ブリだ。

「なに言うてはんねやろ?」と思うかもしれない。だが世の中は、思っている以上に広い。この世にはジェラートにブリを練りこみ、ブリの身トッピングで仕上げた商品を生み出した猛者がいるのだ。

全国津々浦々の水族館スタッフたちの情熱が生み出したオリジナルメニューを紹介する水族館メシ。記念すべき第1回は城崎マリンワールド(兵庫県豊岡市)が提供する「ブリジェラート」をご紹介。

お味はいかが?

「ブリジェラート」が買えるのは、城崎マリンワールドの体験ゾーン「ダイブ」にあるカフェ。ブリミルクとブリチョコ、2つの味がラインアップされている。フレーバーよりも先に「ブリ」を冠するところに、ブリへの愛とリスペクトを感じるのはわたしだけだろうか。

ふたにはピラミッド型に隊列を組んだブリのイラスト。「BURI GELATO」と表記がアルファベットになるだけで、なんだかおしゃれに感じてしまう。単純で申し訳ない。少し恥ずかしくなり、隊列を組むブリの数を数えてごまかした。

ふたを開けると…さっそくブリ!しっかりブリ!

ジェラートにはペースト状のブリが練りこまれている。未知のものは、生き物の基本に忠実に、まず鼻で確かめる。くんくん…アイスから香った経験のない、いかにも魚らしい匂いがする。面食らいながらもひとくち食べてみると、おや、美味しい。どこかクセになる旨さがある。塩が旨みを醸し出している感じがした。

トッピングのブリはカッチカチのコッチコチ。ジェラートが少し柔らかくなったくらいではまだ気が早いようだった。

#マリンワールドスゴクカタイブリ 

そうハッシュタグをつけてみても、これは流行らないだろう。取材譚としてSNSに投稿しようとして、やめた。

ついさっき面食らったことなど忘れ、手が止まらなくなっていた。不思議といけるな。いや、むしろ美味しいな。あれ?なんかずっと食べていたい気持ちになってきたな。やはり塩味がいい。

さっきまでカッチカチのコッチコチだったブリの切り身はいよいよ、ちょうどいい柔らかさになっていた。ジェラートを食べ尽くしたカップの中に、ポツンとブリが残る。そう、これはショートケーキでいうところのいちごポジションなのだ。シンボルであり、とっておきのお楽しみ。富山湾では王者といわれるブリは、城崎マリンワールドではトッピングの王者の座を射止めた。

最後に残った切り身を丁寧にかじる。
うん、とてもブリ。

どんな人が考えた?

ありそうでなかった、というより、ありそうもなかった「ブリジェラート」の開発に携わったのはこの人。

私がつくりました
城崎マリンワールド飼育課長伊藤公一さん

城崎マリンワールド飼育課長 伊藤 公一さん

セイウチや魚類を中心に水族全般の飼育を経験。特にクリオネの研究でさまざまな成果をあげており
新種「トヨオカハダカカメガイ」「キノサキハダカカメガイ」を日和山海岸で発見
命名した名付け親でもある。


——

これまでに経験したことのない美味しさでした。2017年に発売されたとのことですが、どういった経緯で誕生したのでしょうか?

伊藤

「フィッシュダンス」のオープンに合わせてブリを使った商品ができないかを考えていました。かねてから面識があった地元・豊岡市のジェラート店狩野牧場さまに相談したところ、快く引き受けていただいたことから開発がはじまりました。

——

「フィッシュダンス」というと、“魚たちの驚きの行動を、新しい角度から見られる”体験型プログラムですね。

伊藤

魚たちの身を守る行動、求愛行動、捕食行動など、まるで踊っているような行動を総称して、フィッシュダンスと呼んでいます。

——

プログラムには他の魚も登場しているような気がしますが、なぜブリだったのでしょう?

伊藤

会場で流す映像にはいろいろな魚が登場しますが、体験のメインはブリなんです。ハマチやメジロなど小さい個体が混ざることはありますが、いずれも標準和名は「ブリ」と呼ばれます。

——

ブリが主役だからこその「ブリジェラート」なんですね。魚特有の匂いはありながらも、クセになる旨さがありました。なにか工夫がありそうでしたが…?

伊藤

そうなんです。臭みが課題でしたが、オレンジなどの柑橘類を合わせることで、うまく臭みを消すことができました。これは狩野牧場さんのアイディアです。

——

原材料に書かれているみかん果汁はトッピングの切り身に使われていたんですね。

伊藤

柑橘の果汁で切り身を煮ています。理想の味に仕上がるまで何度も味見を繰り返した自信作です。

——

発売から6年経ってなお健在ということは、人気メニューと捉えてよいのでしょうか。

伊藤

年齢層は幅広く、特に「フィッシュダンス」に参加された方に多くご購入いただいています。今では城崎マリンワールドを代表するスイーツのひとつです。


ブリの躍動感あふれるダンスを見ているとつい、「美味しそう」などと思ってブリ欲が掻き立てられてしまうのかもしれないと思ったが、黙っておいた。

水族館メシデータ

ここで食べられます

城崎マリンワールド ダイブカフェ
兵庫県豊岡市瀬戸1090
https://marineworld.hiyoriyama.co.jp/

ブリジェラート
ブリミルク/ブリチョコ 各410円
(2023年12月時点)

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