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連載エッセイ

一目惚れ!タコのいる暮らしはこうして始まった!|タコのいる日々 [1]

連載「タコのいる日々」とは
タコは賢い!・・・って、知ってましたか?海の賢者とも呼ばれる、無脊椎動物最高クラスの知性をもった生き物、マダコ。その知性は、ユーモラスで温かいんです。そんなマダコたちと一緒に過ごす、てんやわんやの楽しい日々。そして、寿命たった1年の生き物と一生を共にして培われる絆。連載「タコのいる日々」では、そんなマダコ飼育とマダコのいる日々の風景をお届けします。
相関図|タコのいる日々

みなさんこんにちは。「タコのいる日々」を連載でおとどけします、もちと申します。これから紹介していく我が家の可愛いタコたちを是非よろしくおねがいします。

さて、突然ですが、みなさんは「タコ」と聞くと何を連想しますか?

実は普段は茶色っぽいマダコだが、このように赤っぽく見える時もある。

実は普段は茶色っぽいマダコだが、このように赤っぽく見える時もある。

私たちに身近なタコ

タコ焼き?タコ飯?タコわさ?色んな食べ物がどんどん挙がってきそうですよね!タコは食材として日本人に大人気。私もタコは大好物。実際、日本のタコの消費量は世界一で、なんと、世界のタコの消費量の半分以上を占めるのだとか。

食材として非常に身近だからか、日本人はタコに食材以上の親しみを持ちやすいようです。面白い、ヘンテコ、可愛い!千変万化な性質ゆえか、色んな印象を持たれているのがタコのもう一つの側面。キャラクターや、グッズとしてもタコは人気です。特に近年、「かわいい!」と人気を博しているものの一つとして、深海のアイドル・メンダコはよく知られた種になってきています。

色々な場面でタコは大人気!

色々な場面でタコは大人気!

色々な種類のタコたち

実は、ひと口にタコといっても非常に種類が豊富です。食材としては、マダコ、イイダコ、ミズダコなどはポピュラーですが、マダコやイイダコに近縁なスナダコは日本近海に多く生息しており、もちろん食材としても活躍できます。寒い地方に行けば、ヤナギダコという大型のタコも生息しており、食用にされます。

他にも、シマダコやウデナガカクレダコなどや、有毒の美麗種として知られるサメハダテナガダコやオオマルモンダコ、ヒョウモンダコなども日本近海に生息しています。ここでいくつか挙げた種以外に、深海性のタコなどもおり、メンダコはそういったジャンルに属します。近年では、オオメンダコが水族館で展示されましたね。

どれも、頭足類らしい頭(外套膜)と、基本的に吸盤を持った8本の足があることは共通しますが、十種十色と言っても過言ではないほど、種類別に特徴があります。脚が短く、寸胴なメンダコや、手足が長く星空のような模様を有するサメハダテナガダコ。暗闇で光っているように見える模様をもつシマダコや、警戒色になると一気に黄色ベースにサファイアブルーの円形模様が発現するオオマルモンダコやヒョウモンダコ・・・・。違いは見た目にとどまらず、擬態を得意とするミミックオクトパスや、道具を使うココナッツオクトパスのように固有の技を特徴とする種も。

レース細工のような美しい傘膜が特徴的な深海性のタコ、イッカクダコ。

レース細工のような美しい傘膜が特徴的な深海性のタコ、イッカクダコ。

マダコは賢い

ざっと思いついた種をあげてもかなりの量になる多種多様なタコですが、その中でも私の推しはマダコ。食材としても、キャラクターとしても、最も身近なタコであるマダコを推しています。そして、なんと驚くことなかれ。私はマダコを家族の一員として一緒に暮らしています。

直径2cmほどの土管に隠れる子ダコのみずあめ。色々な場所に隠れて飼い主を驚かすわんぱくっぷり!

直径2cmほどの土管に隠れる子ダコのみずあめ。色々な場所に隠れて飼い主を驚かすわんぱくっぷり!

「タコって飼えるの・・・?」と思われた方も少なくないかもしれません。確かに、身近なのだけれど飼育下での習性についてはあまり知られていないものも多く、ペットとして飼育することが難しい種もいます。

本来は冷水に棲むマダコも、飼育が簡単と断言できる生き物ではありません。しっかりとした設備を用意し、細かな管理をしてあげなければいけません。タコ消費大国に住む私たちにとって、マダコは非常に身近な存在であり、しかしその生態については知られざるところも多く、まだまだ一般家庭での飼育が普及していない……そんな存在なのでしょう。

この数年、頭足類がメディアでも引っ張りだこ。メディアが引っ張っているのか、タコが引っ張っているのか分かりませんが(笑)、注目されていることは間違いなし。テレビなどでも、タコの驚くべき数々の能力や、なんといってもその知性を知った方が増えてきていることでしょう。そう、ずばりタコは賢いのです。それも、チンパンジークラスの知性を持った生き物でないと実行できないことを表現できるほどに。種類によって知性には差がありますが、マダコの知性は無脊椎動物の中で最高クラス。私たちとは全く違った進化の方面で最高の知性を有する生物、それがタコなのです。

カメラに向かってノリノリでポージングをしてくれるご機嫌なにんにく。

カメラに向かってノリノリでポージングをしてくれるご機嫌なにんにく。

「海の賢者」とまで呼ばれる知性をもった生き物であるタコ。特に私が飼育しているマダコについて、“犬や猫と同等のレベルのコミュニケーションをとれる存在”であると感じています。知性の種類は、マダコ特有のものも少なくありません。瓶のふたを開けるなどの芸を仕込むこともできなくはありませんが、それ以上に深い知性を私はタコに感じています。

例えば、瓶のふたを開けられるにしても、「初見の瓶のふたを自分で考えて開ける」ですとか、「開け方を見せると、開けるまでの時間が短くなる」ですとか、「開け方を工夫して、2回目、3回目以降で異なる開け方をする」といった、もう1歩2歩先の賢さをタコは見せてくれます。

タコを見ていると「何かをクリエイトしようとする」「何かを分解して解明しようとする」という、小さな破壊と創造を繰り返すような知性を感じることがあります。そして、そのタコの創作活動の中の一つとして、飼育者とのスキンシップやコミュニケーションを通じて、不適切な接し方を捨て、適切な接し方を模索し、絆や信頼関係、愛情といった絆を創造するという場面が必ずあるのです。この温かい知性に私は引き込まれているのかもしれません。

瓶のふたを開ける様子。今回は取っ手に腕を通して開ける計画のようだ。

瓶のふたを開ける様子。今回は取っ手に腕を通して開ける計画のようだ。

マダコとの出会い

飼育してみると、そんな深みを見せてくれるマダコたちですが、私はそこまでマダコに詳しくなってマダコに惹かれたわけではありません。色々書きましたが、そもそもマダコたちは私たちのハートを初見で射抜いてくれるほどの魅力の持ち主。知性も魅力ですが、チャーミングな仕草もまた魅力的なのです。

忘れられない“私のマダコとの出会い”、それは行きつけの熱帯魚屋さんにいったある日のこと。なんと水槽の中にマダコが!そして、お店のご厚意で給餌の様子を見せてもらったのでした。

今でも脳裏に鮮明に残る、私の心を鷲掴みにした給餌。マダコ(後のうめぼし)は店員さんの様子から餌がもらえるのを察して、水槽のガラスにくっついて待っているようでした。ガツガツするのではなく、静かに。

食欲という本能を理性で抑えることができるのでしょうか。慎ましさのようなものを感じました。そして、餌が差し出されると、マダコは足を延ばして受け取りました。その仕草の品格たるや!無駄のない優美な動きで餌をキャッチ。美しいと感じました。短い間に、凄い情報量を表現してくれたマダコ。色々ときめいてしまいしましたが、一言にまとめるなら“かわいい!!”この一目惚れが、今もまだ続いているのです。

私が初めて飼育したマダコのうめぼし。かわいい!の一言に尽きる。

私が初めて飼育したマダコのうめぼし。かわいい!の一言に尽きる。

飼い主との触れ合いが大好きなちくわ。

飼い主との触れ合いが大好きなちくわ。

次回からはタコとの日々のスキンシップやコミュニケーション、そしてタコが見せてくれる沢山の“かわいい!”を紹介していきます。

タコは飼い主を(物理的に)ぎゅー!っと引き込んでくれますが、連載「タコのいる日々」では、読者の皆様をぎゅー!っとタコ飼育の世界に引き込むことができれば幸いです。

ぎゅーーーーーーーーーーっ! ※力加減を知っているので痛くはない。

ぎゅーーーーーーーーーーっ! ※力加減を知っているので痛くはない。

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もち

もち

ホペイフリーク副代表・アクア部門代表

海洋生物を求め東京都を拠点として全国を奔走。訪問済み水族館数は2025年1月時点で42館。ある日タコに一目惚れしてから人生が一変。タコ飼育に没入。これまで10匹以上のタコを飼育してきた。テレビ出演・メディア執筆に加え、SNSやブログなどでもタコの魅力を紹介中。

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